「来週までに、引き継ぎ資料を作っておいて」
急に頼まれて、何から手を付けるか
迷っていませんか。
この記事は、退職・異動・担当替え・契約満了・
産休の前など、期限つきで仕事を渡す人向けです。
最初の1時間でやることと、どこまで作れば
「渡せた」と言えるかを、事務の仕事に絞ってまとめます。
ふだんの仕事と並行して、ひとりで進める前提です。
たとえば、次のような方を想定しています(架空の例です)。
製造業の事務所で、担当替えのため、受注入力と月末の集計を
来月から入る人に渡すことになった派遣社員です。
上司からは「2週間くらいで資料を作って」と頼まれています。
期限の日に「一覧1枚」と「優先する業務(★)の手順書」を、
試し読みまで済ませて渡すまでの道順を、
ステップ0〜7で示します。
私はこれまで、製造業の事務・現場サポート系の仕事で、
4種類のマニュアルを作ってきました。
業務の手順書、新人・引き継ぎ用、
Excelやツールの使い方ガイド、図解やスクショ入りのものです。
この記事では、この4つの分け方を引き継ぎ資料に当てはめます。
記入例は、私が実務で扱ってきた受発注・在庫・集計の
事務を題材にした架空の例で、実在の会社名や数字ではありません。
文中の時間は、この記事の進め方に沿った目安です。
今日は、ステップ0〜2(最初の1時間)だけで十分です。
30分しか取れない日は、2日に分けてもかまいません。
引き継ぎ書と手順書は分けて作る
引き継ぎ書は「一覧1枚」、手順書は「★の業務だけ」
全部を同じ細かさで書かず、資料を2つに分けます。
- 引き継ぎ書:全業務を1行ずつ並べた一覧1枚
- 手順書:★を付けた業務だけの、やり方の説明
(★=優先する3つ前後の業務。選び方はステップ2)
2つを合わせて「引き継ぎ資料」と呼びます。

4種類の、この記事での使い道です。
| 私が作ってきたマニュアル | この記事での使い道 |
|---|---|
| 新人・引き継ぎ用 | 引き継ぎ一覧と全体の型 |
| 業務の手順書 | ★の業務の手順書 |
| Excel・ツールの使い方ガイド | 触らないセル・マクロ・自動で動く処理 |
| 図解・スクショ入り | 画面画像に写った取引先名などの確認 |
どこまで作れば完成か
手順書を作った★の業務を、資料だけで1回通せて、
止まった所がすべて書き戻されている。
★以外の業務は、一覧の1行と
参考ファイルの場所があれば完了です。
この線でよいかは、ステップ0で上司に確かめます。
| 段 | 中身 | 目安 |
|---|---|---|
| 最低限版 | 一覧1枚+★の手順書1本(試し読みと書き戻しまで) | 合計2.5〜3.5時間ほど |
| 余裕があれば | ★の手順書を3本まで | 合計4.5〜7時間ほど |
1日30〜60分なら、最低限版は3〜7日ほどが目安です
(★の業務をやる日が、その間に来る場合)。
手順書が間に合わない★は、一覧にそう書き、
いつ誰が作るかを上司と決めます。
ExcelとWord、どちらで作る?
一覧はExcel、画像入りの手順書はWordが作りやすいことが多いです。
職場に決まった形式があれば、そちらを優先します。
最初の1時間でやること(ステップ0〜2)
ステップ0 範囲と読む人を決める(目安5〜10分)
まず上司に、3つを確認します。
- いつまでに渡すか
- 誰に渡すか
- どの業務まで渡すか
作る時間を業務時間内に取れるかと、保存場所も相談します。
「★の業務は手順書、ほかは一覧の1行」でよいかも確かめます。
すぐ聞けない日は仮の答えで進め、その日のうちに確かめます。
資料は職場のパソコンで作り、家には持ち帰りません。
派遣で働いている人へ
範囲と作る時間は、派遣先の上司に相談します。
声のかけ方の例(架空):「引き継ぎ資料を作る時間を、
1日30分ほど業務の中で取ってもよいですか」
契約の範囲(マニュアル作りが仕事に入っているか)が
気になるときは、派遣元の担当者にも確かめます。
厚生労働省の育休復帰支援プラン策定マニュアルは
育休の場面の資料ですが、全体版(PDF・約47MB)の41ページに、
派遣元が派遣で働く人に、派遣先の上司や同僚と
必要に応じて引き継ぎを相談しておくよう頼む、とあります。
次に、一覧用のExcelファイルを「引き継ぎ一覧_v01」のように
最後に版番号を付けた名前で作り、決めた場所に保存します。
一番上に、3つの答えと読む人の1行を書きます。
(例・架空)この業務を初めてやる人向け。
Excelの入力とフィルターはできる前提。
この1行が「どこまで細かく書くか」の基準です。
読む人ができることは省き、できないことを書きます。
確認:3つの答え(仮でもよい)と読む人の1行が、
一覧ファイルの一番上にある。
勤務先の資料・メール・画面は、許可なく外部のAIに入れません。
職場のルールでAIを使ってよい場合は、
先に決めたい5項目をこちらにまとめています。
ステップ1 担当業務を全部1行ずつ書き出す(目安25〜30分)
読む人の1行の下に、列見出しを左からこの順で入れます。
業務名・頻度・次の期限・ファイルの場所・関係先・相談先・印
関係先はデータをくれる人や渡す先、相談先は迷ったときに聞く人で、
どちらも「上司」「倉庫の担当」のような役割名で書きます。
- 頻度で分ける:毎日・毎週・毎月・年1回/不定期
- 1行に1業務。「〜する」と動詞で書く
- 材料:カレンダー・送信メール・メモ・共有フォルダ
(更新日時の順に並べると、最近さわったファイルが分かる)
厚生労働省の同じマニュアルでも、引き継ぎに向けて
「業務の棚卸し」(担当業務の書き出し)をし、
一覧にするよう示しています(全体版の34ページ)。
架空の記入例です(★はステップ2で付けたあとの形。
場所・関係先・相談先の列は省略)。
| 業務名 | 頻度 | 次の期限 | 印 |
|---|---|---|---|
| 受注を受注表に入力する | 毎日 | その日の夕方 | 知 ★ |
| 出荷・入荷の数を在庫表に入れる | 毎日 | 翌朝 | 知・判 ★ |
| 月末の在庫・売上を集計する | 毎月 | 月初3営業日目 | 知・鍵・判 ★ |
| 棚卸の数を集計表に入れる | 年1回・不定期 | 期末(半年先) | 判 |
確認:直近1か月のカレンダーと送信メール、
去年の同じ時期のファイルを見返しても、
一覧にない業務が出てこない。
ステップ2 「知・鍵・判」の印と★で、1本目を決める(目安15〜20分)
各行に、当てはまる印を付けます。
- 知:やり方を知っているのが自分だけ
- 鍵:自分しか開けない・押さない(ファイル・権限・マクロのボタン)
- 判:自分が判断している
印のある業務のうち、次に当たるものに★を付けます。
- 引き継ぎのあと1か月以内に期限が来る
- ミスすると社外(取引先など)に迷惑がかかる
★は3つ前後まで。多いときは、印の多いものから残します。
1本目は、印がいちばん多いもの
(同じなら期限が早いもの)にします。
架空の例では、★は3つ(毎日の2つと月末の集計)で、
1本目は印が3つ付いた月末の集計です。
棚卸は期限が半年先なので、一覧の1行で渡します。
1本目の手順書用にWordのファイルを1つ作り(名前の最後に_v01)、
一番上に次の3行だけ書きます(架空の例)。
- 業務名:月末の在庫・売上を集計する
- 開始条件(始めてよい合図):前月分の出荷データが全部入力された
- 完了状態(ここまでで終わり):集計ファイルを共有フォルダに
保存し、上司に保存場所を伝えた
確認:★を付けた理由(どの印か)が言えて、
1本目の最初の3行がある。
ここで最初の1時間は終わりです。
今日はここまでで十分です。
★の手順書を書く(ステップ3・4)
実際にやる日に、1行1動作で書く(目安1業務30〜60分)
★の業務を実際にやる日に、手を動かしながら、
1行に1つの動作で書きます。
フォルダ→ファイル→シート→列までたどれるようにします。
架空の例です。
- 共有フォルダ「集計」の「在庫売上集計.xlsm」を開く
- シート「前月」をコピーし、名前を当月(例:10月)に変える
- 共有フォルダ「出荷」の当月のファイルから、
出荷数を「出荷数」の列に値だけ貼る - 「集計」ボタンを押す
- 「合計」シートの出荷数の合計が、出荷データと同じか見る
- 上書き保存し、上司に保存場所を伝える
一文は短く、3つ以上並ぶときは箇条書きにします。
文化審議会の公用文作成の考え方も、一文を短くすることや、
三つ以上の情報を並べるときに箇条書を使うことを挙げています。
期限までにその業務の日が来ないときは、前回のファイルを見て書き、
一覧に「次にやる日に後任と確かめる」と書いておきます。
確認:「いつもの」「適宜」「例のファイル」が残っていない。
手順の横に「急所」と「触らない場所」を書く
手順の横に「急所」(外すと失敗しやすい所)の列を作ります。
4種類の「使い方ガイド」にあたる部分です。架空の例です。
| 手順 | 急所 |
|---|---|
| 1 集計ファイルを開く | なし |
| 3 出荷数を値だけ貼る | 「引当数」の列は数式なので入力しない |
| 4 「集計」ボタンを押す | 押す前に、貼った行数と出荷データの件数が同じか見る |
厚生労働省の作業手順書作成要領及び事例
(介護の職場向けの資料)にも、手順と急所を並べる様式があります。
マクロの中身は説明しません。
使い方と押す前後の確認、止まったときの相談先を書きます。
確認:急所が空の行には「なし」と書いてある。
AIにExcel表の改善を頼むときの、
変えてよい場所の決め方は、こちらで整理しています。
判断の分かれ目は1行で書く(目安1業務10〜15分)
たまにしか起きない判断は、書き漏れやすい所です。
次のような所を探し、下の型で書きます。
- 作業中に手が止まる所
- 人から聞かれた所
- メールを見返すと毎回少し違う所
ふだんは○○する
→ただし△△のときは□□する
→迷ったら(役割名)に確認
例1(架空)
ふだんは、受注数を在庫から引き当てる
→ただし、受注数が在庫数より多いときは「保留」の列に入れる
→迷ったら、出荷の担当に確認
例2(年に数回しか使わない行・架空)
ふだんは、「調整」の行は空けておく
→ただし、棚卸で数が合わなかった月は、上司が決めた数を入れる
→迷ったら、上司に確認
確認:★の業務ごとに1行以上ある(なければ「なし」)。
相談先が、人の名前でなく役割名で書いてある。
在宅のデータ入力向けの記事ですが、
入力ルールを1枚のメモにする方法をこちらで紹介しています。

書き漏れやすい4つ:置き場所・鍵・見えない処理・画面画像(ステップ5)
あとから聞かれやすい所と、見落としやすい所です(目安20〜30分)。
置き場所とファイル名
共有フォルダの場所とファイル名を、
「いつものフォルダ」ではなく、たどれる形で書きます。
在宅ワークの納品ファイル名の付け方ですが、
職場のファイル名にも使える考え方です。
パスワードは書かず「誰に再設定を頼むか」を書く
パスワードは、資料にも付箋にも残しません。
代わりに、発行・再設定を誰に頼むかと、申請の方法を書きます。
後任のIDの発行も、渡す日より前に上司に頼んでおきます。
(例・架空)在庫システムのパスワード:
資料には書かない。再設定は、
情報システムの担当に社内の申請で頼む。
パスワードを資料に書くかどうかは、
解説記事の間でも意見が分かれています。
総務省の安全なパスワードの設定・管理は、
保管で気をつける点として、次を挙げています。
- 同僚などの第三者に教えない
- 電子メールでやりとりしない
- メモを、人の目に触れる所に貼らない
会社のルールがあれば、そちらを優先してください。
画面に見えない自動処理も一覧に入れる
私は自分用に、Googleスプレッドシートの自動転記の仕組みを、
GAS(Googleのサービスを自動で動かすしくみ)で
作ったことがあります。
こうした仕組みは、画面を見ただけでは
動いていることが分かりません。
ボタンで動く集計や、決まった時刻に届く自動メールなども
一覧に1行入れ、次の4つを書きます。
分からない所は「不明」とし、相談先だけでも埋めます。
- いつ動くか
- 止め方
- 動かないときに見る所
- 相談先
Googleフォームの自動返信を例にした
引き継ぎ手順は、こちらにまとめています。
画面画像は、写り込みを確かめてから貼る
4種類の「図解・スクショ入り」にあたる部分です。
画面画像は1枚ずつ拡大し、取引先名・単価・担当者名が
写っていたら、パソコンに入っている画像編集ソフトで
その部分を塗りつぶし、保存してから貼ります。
やり方が分からなければ、画像は使わず文字で書きます。
確かめた画像の下には「写り込み確認済み」と書きます。
確認:資料にパスワードの文字がない。
「ファイルの場所」「相談先」に空欄がない。
画像の下に、全部「写り込み確認済み」がある。
試し読みで仕上げて、渡す(ステップ6・7)
資料だけで1回通してもらう(目安1業務20〜30分)
後任に資料だけを渡し、口を出さずに見守り、
止まった所に印を付けてもらいます。
試しのためだけに本番のファイルは操作せず、
実際にその業務をやる日に行うか、上司に確かめてコピーで試します。
送信や本番の更新を伴う操作は、先に上司に確認します。
後任が未定、または一緒に作業できないときは、
同僚に読んでもらうか、翌日の自分が資料だけで操作します。
これは仮の確認なので、一覧に「後任とは未確認」と書きます。
止まった所を書き戻して、v02にする
止まった所と出た質問を、資料に書き足します。
ファイル名の「_v01」を「_v02」に変え、更新日を入れます。
版番号の付け方は、
在宅ワークの納品ファイル名はどう付ける?
でも紹介しています。
確認:止まった所がすべて反映され、
ファイル名がv02になっている。
置き場所を伝え、その場で開けるか確かめる(目安10分)
一覧の最後に「途中の業務と次の手順」を書きます。
上司(と後任)に置き場所を伝え、
相手がその場でファイルを開けたか確かめます。
確認:相手がその場でファイルを開けた。
まとめ:完成チェックと、今日の一歩
完成チェック5項目
- 一覧に全業務があり、ファイルの場所・相談先に空欄がない
- ★の手順書に「いつもの」「適宜」「例のファイル」がない
- ★の業務ごとに判断の1行がある(なければ「なし」)
- 資料にパスワードがなく、画像に取引先名・単価がない
- 手順書を作った★を資料だけで通し、書き戻した(v02)
やらないこと
- テンプレート探し
- 新しいツール選び
- ★以外の手順書づくり
- 見た目の調整
- 定時後に黙って作ること
- 資料を家に持ち帰ること(私物のPCや個人のメールも)
一覧表の列見出し(ステップ1の順)
業務名・頻度・次の期限・ファイルの場所・関係先・相談先・印
判断の1行の型
ふだんは○○する
→ただし△△のときは□□する
→迷ったら(役割名)に確認
まず今日、業務の合間に30分取れたら、
ステップ0で上司に確かめてから、
ステップ1の一覧を作ってみてください。
在宅ワークの準備をしている人へ。
職場の資料は持ち帰らず、自宅では、この記事の型を使って
架空の業務で1枚作る練習から始めてみてください。
ご自身の事業など、社外に出してよい業務なら、
この記事の「読む人・開始条件・完了状態・手順メモ」が、
手順書づくりを人に頼むときの材料にもなります。
私はココナラで、1つの業務を
A4換算3ページまでの手順書に整理するサービス
「業務手順を見やすいマニュアルに整理します」を
出品しています。
勤務先・派遣先の資料や画面は送らないでください。
相談・購入後のやり取りはココナラ上で行います。
ココナラの業務マニュアル整理サービスの内容を見る






